日本に「大阪ぎらい」の空気が広がっているという話を聞いたことがあるでしょうか。
最近、大阪出身の芸人やタレントがメディアで批判されたり、大阪のコメディが古臭くて乱暴だと言われたりすることが増えています。
一方で、大阪は日本の経済や文化の中心地の一つであり、多くの人が訪れる魅力的な都市でもあります。
では、なぜ大阪ぎらいという感情が生まれるのでしょうか。
大阪の笑いとイメージのギャップに迫り、大阪ぎらいの現状や背景、対策などについて考察しました。
目次
松本人志騒動と「大阪ぎらい」の広がり
ダウンタウンの松本人志さんに関する週刊文春の報道が出て以降、少し懐かしい動画や画像がSNS上でしばしば拡散されました。
特に注目を集めたのは、当時まだ駆け出しだった女優の篠原涼子が、松本さんにどつかれたり、股間を触られたりするシーンでした。
このような演出に対して批判的な反応が寄せられました。
しかし、ネットユーザーの反応にはこれまでになかった特徴が見られました。
在京キー局のディレクターは、
「大阪の笑いは乱暴なんじゃないか」
といった反応が広がっていると指摘しています。
ダウンタウンのお二人は兵庫県尼崎市の出身であり、もちろん大阪の芸人が全員乱暴だとは言えません。
しかし、今回の件で大阪の「イメージ」が悪くなっている感は否めません。
大阪の複雑な表情
大阪は「オモロイ」というイメージに加えて、
「ツッコミがキツい」
「ズケズケした物言いが下品」
といったイメージを抱く人も多いでしょう。
セクハラやパワハラ、暴力、あるいは「強い物言い」に社会が敏感になるなかで、「大阪的なコミュニケーション」が世間の空気とズレて感じられ、「大阪ぎらい」とでも呼ぶべき雰囲気が広がっているのかもしれません。
しかし、大阪のコミュニケーションは、柔らかく、それでいてしたたかな特徴を持っていました。
かつて大阪の商売の中心である「船場」を舞台に小説を多数書いた作家の山崎豊子は、大阪弁が商業語として驚くほど複雑で豊富なニュアンスを持っていると評しています。
大阪のコミュニケーションはほかの地域のそれと大きく違うわけではありませんが、じんわりとした差があります。
大阪的なコミュニケーションは、言うことは言いながらも対立を避けるところが特徴です。
洗練された技術だと言えるでしょう。
大阪ぎらいの現状と事例
大阪ぎらいという言葉は、いつから使われるようになったのでしょうか。
インターネット上で検索してみると、2000年代後半から2010年代前半にかけて、大阪ぎらいに関するブログや掲示板の書き込みが増えていることが分かります。
その中には、大阪に住んでいる人や旅行で訪れた人が、大阪の人の態度や言葉遣い、マナーなどに不快感を表明したり、大阪の文化や風習に馴染めなかったりするものが多く見られます。
例えば、以下のようなものです。
- 大阪の人は自分のことしか考えてない。道を歩いていても、自分のペースで歩いて、他の人にぶつかっても謝らない。電車に乗っても、席を譲らないし、優先席に座ってスマホをいじってる。
- 大阪の人は言葉遣いが悪い。『あんた』や『おまえ』と呼ぶのは失礼だし、『なんでやねん』や『ほなな』というのは意味が分からない。店員に対しても、『おい』や『ちょっと』と呼ぶのは失礼だし、『早くしろ』や『もっと持ってこい』と命令するのは横柄だ。
- 大阪の人はノリが悪い。冗談や皮肉を言っても、笑わないし、ツッコまない。逆に、自分たちの方言やギャグを言っても、他の人には通じないし、面白くない。大阪の人は自分たちだけで盛り上がって、他の人を仲間外れにする。
これらの書き込みは、大阪の人に対する偏見や誤解が多いことが分かります。
しかし、これらの感想は、大阪に対するイメージと現実のギャップによって生じるものであるとも言えます。
では、なぜ大阪に対するイメージと現実にギャップがあるのでしょうか。
その理由の一つに、大阪の笑いが関係していると考えられます。
大阪の笑いとイメージのギャップ
大阪といえば、笑いの街として有名です。
大阪には吉本興業をはじめとする芸能事務所や劇場が多くあり、多くの芸人やタレントが育ってきました。
また、大阪には落語や漫才、新喜劇などの伝統的なコメディの形式が根付いていて、大阪の人は、笑いのセンスがあると言われています。
しかし、大阪の笑いは他の地域の人にとっては、受け入れられないことも多いのも事実です。
大阪人特有のツッコミ
その理由の一つに、大阪の笑いの特徴として挙げられる「ツッコミ」があります。
ツッコミとは、相手の言動に対して突っ込んだり、ボケたり、ボケを否定したりすることです。
大阪の笑いではツッコミが重要な役割を果たしていて、ツッコミがうまいと評価されることが多いということがあります。
しかし、ツッコミは相手の言動を批判したり、否定したりすることでもあるため、笑いの意図が伝わらないと攻撃的に感じられることがあります。
例えば、以下のような場面です。
「大阪の人は、自分のことしか考えてない。道を歩いていても、自分のペースで歩いて、他の人にぶつかっても謝らない。」
「なんでやねん!そんなこと言うてるおまえこそ、自分のことしか考えてないやろ!道を歩いていても、周りに気を配らずに、ぶつかってきたら謝るのが当たり前やろ!」
この場面では、大阪の人は相手の言動に対してツッコミを入れて、笑いを取ろうとしています。
しかし、相手は大阪の人の言葉遣いや態度に不快感を覚えて、怒ってしまうかもしれません。
このように、大阪の笑いはツッコミの文化があることで、他の地域の人とのコミュニケーションに障害を生じることがあります。
大阪の笑いの変化
もう一つの理由として、大阪の笑いの変化があります。
大阪の笑いは、時代とともに変化してきました。
かつては、落語や漫才などの寄席芸が主流でありましたが、テレビの普及によって新喜劇やバラエティ番組などのメディア芸が台頭してきました。
また、大阪の笑いは地域性や方言などの要素を活かして、大阪独自のギャグや笑いのキャラクターを作り上げてきました。
大阪の笑いの内容
大阪の笑いは他の地域の人にとっては、古臭くて乱暴だと言われることもあります。
その理由の一つに、大阪の笑いの内容があります。
大阪の笑いの内容とは、何を笑いのネタにするかということです。
大阪の笑いでは、日常生活や社会問題などの身近な話題を笑いのネタにすることが多いのが特徴です。
また、大阪の笑いでは自虐や下ネタ、差別や暴力などのタブーな話題を笑いのネタにすることもあります。
これらの話題は、大阪の人にとっては笑いのツールとして使われていて、笑いを通して自分や社会を風刺したり、批判したり、発散したりすることができます。
しかし、これらの話題は他の地域の人にとっては、不快や不適切だと感じられることがあります。
例えば、以下のような場面です。
「大阪の人は、自虐が好きや。自分のことを貧乏やバカやブスやデブやと言うて、笑いを取ろうとする。」
「それは、自分のコンプレックスや劣等感を笑いに変えて、前向きに生きようとする姿勢や。自分のことを笑える人は、他人のことも笑えるし、許せるし、強いんや。」
「そういうのは、自分を卑下して、他人に同情や同意を求めるのと同じや。自分のことを好きになれない人は、他人のことも好きになれないし、信頼できないし、弱いんや。」
この場面では、大阪の人は自虐を笑いのネタにして、自分の強さや明るさをアピールしようとしています。
しかし、相手は自虐を不健康や自己否定的だと感じて、心配してしまうかもしれません。
このように、大阪の笑いの内容は、他の地域の人の価値観や感性とぶつかることがあります。
大阪ぎらいの背景と対策
このように、大阪の笑いはツッコミや内容などの特徴があることで、他の地域の人とのギャップを生み出していると考えられます。
では、なぜ大阪の笑いは、他の地域の笑いと異なるのでしょうか。
その背景には、大阪の歴史や文化が関係していると言える。
大阪は、古くから商業や交易の中心地として栄えてきた都市です。
大阪の人は商売や交渉の場で言葉や態度で相手を引き付けたり、騙したり、笑わせたりする技術を身につけてきました。
また、大阪の人は江戸時代には幕府の支配に反発したり、明治時代には政府の政策に不満を持ったりするなど、権力や権威に対して批判的な姿勢をとってきました。
さらに、大阪の人は、戦争や災害などの苦難にも耐えてきました。
これらの歴史や文化は大阪の人の笑いにも反映されていて、大阪の人は言葉や態度で相手をツッコんだり、社会や自分を風刺したり、苦しみを笑いに変えたりすることができるのです。
しかし、大阪の歴史や文化は、他の地域の人にとっては理解しにくいこともあります。
他の地域の人は、商売や交渉の場では言葉や態度で相手を尊重したり、信頼したり、誠実に対応したりすることを重視します。
また、他の地域の人は、権力や権威に対しては従順や忠誠を示したり、敬意を払ったりすることを重視します。
さらに、他の地域の人は、苦難に対しては静かに耐えたり、助け合ったり、感謝したりすることを重視します。
これらの価値観や感性は他の地域の人の笑いにも反映されていて、他の地域の人は言葉や態度で相手を笑わせたり、社会や自分を肯定したり、幸せを感じたりすることができるのです。
このように、大阪の人と他の地域の人は歴史や文化によって、笑いのスタイルや目的が異なることが分かります。
では、どうすれば、大阪ぎらいという感情を解消することができるのでしょうか。
その対策として、以下のようなことが考えられる。
- 大阪の人は、他の地域の人の価値観や感性を尊重し、笑いのネタやツッコミをするときには、相手の立場や状況を考慮し、不快や不適切なことを言わないように気をつける。
- 他の地域の人は、大阪の人の歴史や文化を理解し、笑いのネタやツッコミをするときには、相手の意図や背景を考慮し、攻撃的や否定的なことを感じないように気をつける。
- 大阪の人と他の地域の人は、笑いの違いを認め合い、笑いの共通点を見つける。例えば、笑いのテーマやジャンル、キャラクターなどで、共感や興味を持てるものを探す。また、笑いの方法や表現、リアクションなどで、学びや楽しみを得られるものを探す。
まとめ
大阪の笑いとイメージのギャップに迫り、大阪ぎらいの現状や背景、対策などについて考察しました。
大阪の笑いはツッコミや内容などの特徴があることで、他の地域の人とのギャップを生み出していると考えられます。
その背景には、大阪の歴史や文化が関係していると言えます。
そのため、大阪ぎらいという感情を解消するには、大阪の人と他の地域の人が笑いの違いを認め合い、笑いの共通点を見つけることが必要であると考えられます。
大阪の笑いは大阪の人のアイデンティティや魅力の一つであり、大阪の人は自分の笑いを誇りに思っています。
しかし、大阪の笑いは、他の地域の人にとっては理解しにくいこともあります。
その場合は、大阪の人は他の地域の人の価値観や感性を尊重し、笑いのネタやツッコミをするときには相手の立場や状況を考慮し、不快や不適切なことを言わないように気をつけるべきです。
一方、他の地域の人は大阪の人の歴史や文化を理解し、笑いのネタやツッコミをするときには相手の意図や背景を考慮し、攻撃的や否定的なことを感じないように気をつけるべきです。
そして、大阪の人と他の地域の人は笑いの違いを認め合い、笑いの共通点を見つけるべきです。
笑いのテーマやジャンル、キャラクターなどで共感や興味を持てるものを探したり、笑いの方法や表現、リアクションなどで学びや楽しみを得られるものを探したりすることで、笑いの交流や理解が深まると考えられます。
笑いは、人と人とのコミュニケーションや関係の構築に重要な役割を果たすものです。
大阪の笑いと他の地域の笑いが、対立や隔たりではなく協力や共感の源になることを願っています。
Xでの大阪ぎらいへの反応
『週刊現代』「大阪ぎらい」。数年前の某誌「名古屋ぎらい」をなぞったレイアウト。が、中身はほとんど言いがかりだった名古屋ぎらいとは違い、政治、メディア、文化、経済に関して識者の見解を積み重ねて考察。部外者としては興味深く読めましたが、当の大阪の皆さんはどう読まれたのでしょう? pic.twitter.com/eL7lwPa1zB
— 大竹敏之【新刊『間違いだらけの名古屋めし』発売中‼️】 (@bakaruto) February 9, 2024
コンビニの雑誌コーナーで、どこの雑誌か見なかったけど、「大阪ぎらい」と見出しがあって。悲しいな…と。
私は大阪には縁もゆかりもなかった群馬の人間だけど、大阪で何年か働いて、本当にいいところだと思うので…
— Born_in_Joshu (大阪で働く群馬県民)💉×7 (@born_in_Joshu) February 2, 2024
表紙の親指に隠れてる、「大阪ぎらい」ってところ…耳が痛すぎて泣きそう>< https://t.co/PicvfA430m
— ひえたろう@笑顔と上機嫌こそが最高の化粧 (@hietaro) January 30, 2024
まぁあの週刊誌は終わってるけど、対抗して「大阪ぎらい」を言っている東京が嫌いということを示唆無いしは婉曲で表現してるのも同類になってしまうんでねぇのかと思う
— Belfast @ 都市論・地理 (@Bell_of_Metro) January 30, 2024
堺には、大美野や上野芝という上品で閑静な住宅街があるのに、あえてワイルドな土地柄のように流しますよね😞
京都や神戸にも、それなりのアンタッチャブルな地域も在りますのに、それは無いことにして…いつまでも「大阪ぎらい」でお商売してるヤカラを放置しておくのもね~シャクにさわる😡
— みをつくし (@donnaranwa) January 30, 2024
しかし、「大阪ぎらい」の横に書かれた「商都と文化都市のなれの果て」って文字を見て、大阪府民の一人として思う事は、そうやって大阪をダメダメな都市にさせたのは間違いなく、大阪の自民党、公明党、民主党系(連合)、共産党の既存政党共だったという事実だけ。 https://t.co/joVpTSyxaL
— スペース海賊団・頭領(三毛猫) (@VCG0kpp9QGtLttO) January 30, 2024
発売中の週刊現代の特集「大阪ぎらい」で木津毅さんがコメントしています。繊細さと余裕のある街としての来歴をひもときつつ、そうした視点が忘れられているのではないか?と説く内容。おもしろい記事でした! pic.twitter.com/motJNgqQF2
— 方便 (@ryohoben) January 30, 2024
芸人の性加害騒ぎ便乗に違いない。
週刊現代の見出し「 #大阪ぎらい 」を見て思い出した。現役時代の職場は、モロ #阪大閥 。
圧倒的パワハラのトップ(イジメ自殺者も出た?)をはじめ、標準語は大阪弁。
東京弁を真似ての揶揄は日常的で、芸人サンマ並み。— jimykt (@jimykt) January 30, 2024
例の大阪ぎらい特集の5流以下週刊誌、中身みた上で批判とかしたいんだけど、なんかお金払って買うのイヤだなあ。
買ってから全文キャプチャしてアップするか?wとか考えたけど、犯罪を犯してまでやりたくはない。
買った上で最後は薪にくべるしかないか…。— ta-ke-P (@takep200x) January 30, 2024
野次は「嫌がらせ行為」なのに、権利や表現の自由という。
議場で暴れたり殴ったりするパフォーマンスは賞賛される。
天下の大新聞の広告に「大阪ぎらい」というヘイトを大きく出してもなんとも思わない。日本はなんでこんなふうになったんだろう😢
— チルドレンズ オーサカ (@children_s_o) January 29, 2024
「大阪ぎらい」を論じていいのは大阪人だけ。
これを他所の人がやるとただの悪口になる。
関西と関東はヨーロッパとアメリカの関係と同じ。
アメリカ人は一部を除いてアホな田舎もんばかりだからイギリス人の自虐ユーモアがわからない。
千年以上前から都市文明のある大阪からすると東京人は田舎もん。 https://t.co/UO1XeZFd9y— 建築学生GEO (@geogeidai) January 29, 2024