日本は人口減少社会に突入していて、その影響は地方自治体にも及んでいます。
地方公務員はかつては安定した職業として人気が高かったのですが、近年では受験者数が減少し、一部の職種では採用が困難になっています。
また、民間企業との人材獲得競争や職場環境の悪化により、地方公務員を志望しない若者や離職する職員が増えています。
これらの現象は、地方公務員の人手不足を招き、行政サービスの質の低下や住民の不満の増加につながっています。
人口減少と人材流出が地方公務員に及ぼす影響と、それに対する対策について考察しました。
目次
人口減少の影響 受験者数の減少と合格者割れ
人口減少の最大の影響は、地方公務員の受験者数の減少です。
少子化の進行により、20歳前後の人口が急減していて、どの産業も新卒者の確保が難しくなっています。
地方公務員も例外ではなく、2023年の受験者数は10年前と比べて4分の3に減りました。
受験者数の減少は、合格者数の減少にもつながっています。
特に、土木や獣医、電気、建築などの専門職種では、予定数を採用できないケースが広がっています。
これらの職種は、災害対応やインフラ整備などの重要な業務を担っていて、人材不足は自治体の機能に大きな影響を与えます。
人材流出の要因 民間企業との競争と職場環境の悪化
受験者数や合格者数の減少の背景には、民間企業との人材獲得競争に負けていますことがあります。
地方公務員は、その地域の中において給与水準が高く「優良な勤務先」である言われることが多いのですが、大企業と比較すればそうでもなく、昇給ベースも遅いことがあげられます。
また、出題範囲が広い公務員試験に合格するには、かなりの勉強時間が必要ですが、民間企業は採用試験の実施時期が早いところが多く、併願を考えていても民間企業から内定を得るとそのまま就職活動を終えてしまうという人が少なくありません。
こうしたことから、地方公務員を志望しない若者が増えています。
人材流出の要因として、職場環境の悪化も挙げられます。
地方公務員は、収入や待遇が安定しているというメリットに加え、地域に根ざして住民との距離が近く、やりがいも感じられるとされてきました。
しかし、行政の効率化やデジタル化が遅々として進まない中で、過重労働を強いられがちな職場になっています。
最近は窓口で住民から理不尽な要求をつきつけられたり、一方的なクレームの電話が頻繁にかかってきたりするなど、カスタマーハラスメントに悩む自治体が増えています。
こうしたことを嫌って、地方公務員を離職する人や転職を考える人もいます。
負の循環 行政サービスの劣化と住民の離反
人口減少と人材流出は、地方公務員の人手不足を招き、行政サービスの質の低下につながっています。
地方公務員の人手不足は、業務の遅延やミスの増加、サービスの縮小や停止などの形で住民に影響を与えます。
例えば、災害時には救助や復旧の遅れが生じたり、福祉や教育の分野では支援や指導の不足が生じたりします。
こうした行政サービスの劣化は、住民の不満や不信を増やし、自治体への協力や参加を減らします。
住民の離反は、自治体の財政や人口にも悪影響を及ぼします。
住民が減れば、地方税収は目減りし、自治体の財政は悪化します。
財政が悪化すれば、地方公務員の給与や待遇は上がりづらくなり、人材の確保はさらに困難になります。
こうして、人口減少と人材流出が地方公務員の人手不足を招き、行政サービスの劣化と住民の離反を引き起こすという負の循環が起きているのです。
対策の必要性 デジタル化と業務の見直し
こうした状況に対応するためには、各自治体の業務内容を見直さざるを得ません。
これまでは業務の効率化を目的として近隣自治体が連携したり、ICTを導入したりすることが行われてきましたが、それだけでは人手不足の解消には不十分です。
今後は、以下のような対策が必要になると考えられます。
デジタル化の推進
ICTの活用は、業務の効率化や品質の向上、住民の利便性の向上などに貢献します。
しかし、現状では、自治体のデジタル化は遅れていて、紙ベースの業務や手作業が多く残っています。
また、デジタル化に伴うセキュリティやプライバシーの対策も不十分です。
これらの課題を解決するためには、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の一層の推進が必要です。
DXとは、デジタル技術を活用して、組織やビジネスモデル、社会システムなどを変革することです。
自治体におけるDXの例としては、以下のようなものが挙げられます。
- オンライン申請や窓口予約などの電子化
- マイナンバーカードの活用やオンライン証明書発行などの共通基盤の整備
- AIやRPAなどの先端技術の導入による業務の自動化や高度化
- データの収集や分析による政策立案や評価の支援
- クラウドやブロックチェーンなどの技術の活用によるセキュリティやプライバシーの強化
業務の見直し
デジタル化だけでは、人手不足の解消には不十分です。
デジタル化によって業務が変化することを受けて、業務の内容や範囲、方法などを見直す必要があります。
例えば、以下のような取り組みが考えられます。
業務の優先順位や必要性の検証
自治体が担うべき業務とそうでない業務を区別し、重点的に取り組むべき業務に絞ります。
また、業務の目的や効果を明確にし、業務の成果や品質を評価します。
業務の共同化や広域化
近隣の自治体や他の行政機関と連携し、業務の共同化や広域化を進めます。
例えば、保健所や消防署などの施設や人員の共有、災害対応や福祉サービスなどの業務の連携などが挙げられます。
業務の民間委託や地域運営組織の活用
民間企業やNPOなどの外部の組織に業務を委託することで、人材や専門性の確保やコストの削減などのメリットが得られます。
また、地域住民やボランティアなどの地域運営組織に業務を委ねることで、地域のニーズに応えやすくなるとともに、地域の活性化や住民の参画を促進することができます。
以上のように、人口減少と人材流出が地方公務員に及ぼす影響と、それに対する対策について考察しました。
地方公務員の人手不足は、地方自治体の機能や住民の生活に深刻な影響を与える可能性があります。
そのため、デジタル化や業務の見直しといった対策を早急に実施することが必要です。
また、地方公務員の魅力ややりがいを高めることで、人材の確保や定着を図ることも重要です。
地方公務員は、地域に根ざして住民との距離が近く、社会に貢献できる職業です。
その価値を再認識し、地方公務員の危機を乗り越えることができれば、地方の未来は明るいと信じたいものです。
まとめ
以下の点について考察しました。
- 人口減少の影響として、受験者数の減少と合格者割れ
- 人材流出の要因として、民間企業との競争と職場環境の悪化
- 負の循環として、行政サービスの劣化と住民の離反
- 対策の必要性として、デジタル化と業務の見直し
地方公務員の人手不足は、地方自治体の機能や住民の生活に深刻な影響を与える可能性があります。
そのため、デジタル化や業務の見直しといった対策を早急に実施することが必要です。
また、地方公務員の魅力ややりがいを高めることで、人材の確保や定着を図ることも重要です。
地方公務員は、地域に根ざして住民との距離が近く、社会に貢献できる職業です。
その価値を再認識し、地方公務員の危機を乗り越えることができれば、地方の未来は明るいと信じたいものです。
Xでの公務員離れへの反応
若者の公務員離れが進んでいる理由として「労働時間の長さ」や「給与の低さ」、「公務員試験が面倒」といった声が多いようです。労働時間や給与は一定水準以上を求めており、かつ就職活動にそれほど労力をかけたくないといった昨今の傾向が見えてきますね。#人事情報 #採用 #就職 #公務員
— 株式会社Dots@人事情報発信 (@Dots_jinji) February 8, 2024
へぇ、若者の公務員離れね…
ねいと鬼威惨のここ(職)、空いてますよ?
— ねいと (@naght_023) January 25, 2024
民意=消費者の意見という社会になって、消費者の利便性のためにサービス提供側の労働者の負担がどんどん重くなってることが公務員離れの原因だと思う。
— ももこ🐬 (@MWX2ZYz7Aj29kHm) January 24, 2024
公務員離れと言ってるけど、「大卒」の「技術職」が足りてないだけで、高卒の技術職は超狭き門だし、普通職は1.0倍以上応募来てるだろうから、気にする必要はなし。
— なぎふみ (@nagifumi) January 15, 2024
学級閉鎖?公務員離れ?全く情報取れないなー
子供のため 生徒のため 市民のため に働けないの辛たんだろーそれぞれみんなのためを履き違えて
将来も考えず 今腐った現状に合わせて 働いてる奴が目先の得をとる
さらにそれが制度化して それが当然と平然と嘘ではないなんてカス思考— たもなん (@vPcByDGOl1G15RM) January 15, 2024