「もう無理!」
と追い詰められた労働者の声に応え、累計4万人以上の退職をサポートしてきた退職代行サービス
「モームリ」
株式会社アルバトロスが運営する同サービスは、そのキャッチーなフレーズと迅速な対応で急成長を遂げ、業界のトップランナーとして注目を集めてきました。
しかし、2025年10月、同社と提携先の法律事務所が警視庁による家宅捜索を受け、サービスの中核に関わる
「弁護士法違反」
の疑惑が浮上しました。
弁護士資格を持たない事業者が法律事務を扱う
「非弁行為」
の指摘は、退職代行サービスが長年抱えてきた法的グレーゾーンを一気に顕在化させた形です。
なぜ、多くの利用者から支持されてきたモームリが、いま違法性の中心にいるのでしょうか。
この記事では、モームリの急成長の背景、サービスの詳細、そして業界全体に波紋を広げる弁護士法違反疑惑の核心に迫ります。
目次
退職代行サービス「モームリ」とはどんなサービスだったのか?
モームリの基本概要と運営会社アルバトロス
「退職代行モームリ」
は、株式会社アルバトロスが2022年3月に開始した退職代行サービスです。
利用者に代わって会社へ退職の意思を伝え、必要な連絡や手続きを代行することを主な業務としています。
アルバトロスの本社は東京都品川区にあり、設立年は2022年と比較的新しい会社でありながら、サービス開始からわずか数年で累計4万人以上の退職確定をサポートする急成長を遂げました。
料金体系は正社員が22,000円、パート・アルバイトが12,000円と明確で、さらに24時間365日受付の体制を採用しているため、多忙な利用者や退職を急ぐ人々にとって魅力的な選択肢となっています。
しかし、2025年10月には警視庁による家宅捜索を受ける事態に発展し、弁護士法違反疑惑が指摘されています。
急成長の背景にあったマーケティング戦略
退職代行モームリが短期間で市場に浸透した背景には、巧妙なマーケティング戦略がありました。
「もう無理!」
というキャッチフレーズで働く人々の心理に訴えかけた広告キャンペーンは、多くの利用者の共感を呼びました。
また、SNSやオンライン広告を積極活用し、サービスの認知拡大を図ったことも成功の要因といえます。
さらに、2023年末からは利用者の退職理由データを活用したアドバイスサービスを開始し、退職後のキャリア設計にも寄り添う姿勢を見せました。
こうした多角的なサービス提供が、競争の激しい退職代行業界での地位確立に繋がったのです。
利用者が求めた「もう無理!」への共感
モームリの成功のもう一つの理由は、
「もう無理!」
という言葉で象徴される心理的負担への共感です。
このキャッチフレーズは、働く上でストレスや疲弊を抱える多くの人々の心情を的確に捉えています。
これにより、退職に踏み切れなかった人々でも、気軽に相談できる環境が整っていると感じたのではないでしょうか。
また、従業員やアルバイトを含む68人のスタッフ体制による迅速な対応と、利用者ごとにカスタマイズされたサポートが高評価を得ています。
利用者に寄り添ったサービス精神が、多くの口コミやレビューで肯定的に語られていることも特徴的です。
他の退職代行サービスとの違い
モームリは、他の退職代行サービスと比較して、心理的な負担軽減と明瞭な料金体系が際立っている点が差別化の要因となっています。
特に
「迅速で確実に退職を実現する」
という明確な成果を約束しているため、安心感を持って利用できる点が評価されています。
また、24時間365日体制の相談受付も、利用者にとって相談のハードルを下げ、深夜や早朝といった自己都合のタイミングでの利用を可能にしています。
しかし、他のサービスと異なり、弁護士法違反疑惑が浮上したことで、業界全体への影響も考慮されるべきポイントとなっています。
弁護士法違反の疑惑が浮上した経緯
警視庁が注目した「非弁行為」とは何か
退職代行モームリが提供するサービスには、利用者が退職を円滑に進められるよう会社との手続きを代行するものが含まれており、これが利用者から好評を博してきました。
しかし、警視庁はこのサービスが弁護士法に違反する可能性に注目し、捜査を進めています。
特に問題視されているのが
「非弁行為」
と呼ばれるもので、これは弁護士以外の者が法律事務を行うことや、特定の法律問題において直接介入する行為を指します。
本来、弁護士のみが行うべき法律交渉や残業代請求などの業務に関して、モームリが顧客を弁護士にあっせんし報酬を得ていた疑いが浮上しており、これが弁護士法第72条に抵触する可能性があるとされています。
家宅捜索が行われたアルバトロスと弁護士事務所
2025年10月22日、警視庁は退職代行モームリを運営する株式会社アルバトロス本社と、提携先である都内の法律事務所2カ所への家宅捜索を実施しました。
この捜索は、退職代行サービスによる非弁行為が弁護士法に違反している可能性があることを受けたものです。
警視庁は、アルバトロスが弁護士に顧客を紹介する形で報酬を受領し、それを業務の一環としていた可能性を捜査の中心に置いています。
この家宅捜索は、業界全体に与える影響も大きく、退職代行サービスに対する法規制の強化が今後進む可能性を示唆しています。
弁護士への斡旋と紹介料の問題点
アルバトロスが運営する退職代行モームリでは、退職手続きだけでなく、残業代請求などの労働関連の問題にも対応するとして、弁護士へのあっせんを行っていたとの指摘があります。
これに対し、警視庁は、アルバトロスが顧客からの報酬を一部システム化し、提携弁護士と分配していた可能性について捜査しています。
弁護士法では、報酬目的で法律事務を他者にあっせんする行為が明確に禁止されています。
このため、モームリのような退職代行サービスがどの範囲まで業務提供を行うべきか、その線引きが曖昧である点が大きな問題として浮上しています。
メディアが伝える違法性の指摘
今回の疑惑に関して、メディアでもモームリやアルバトロスに対する報道が相次いでいます。
「退職代行モームリが非弁行為を行っていた」
という見出しや、提携弁護士への過剰な依存が違法性を高めた、とする専門家の意見が取り上げられています。
さらに、サービス自体の利便性を評価する声とは裏腹に、利用者が法的トラブルに巻き込まれるリスクが増大する点についても多くの懸念が示されています。
これにより、利用者が安心して依頼できる環境を確立するための制度整備が急務であるとの議論を呼び起こしているのです。
退職代行業界が抱える課題と法的グレーゾーン
退職代行の需要が増加する背景
退職代行サービスの需要が急速に拡大しています。
その背景には、働き方改革や新型コロナウイルスの影響による価値観の変化が挙げられます。
また、ブラック企業問題や職場でのハラスメントの増加により、
「一人では退職を伝えられない」
という悩みを抱える労働者が増えていることも理由の一つです。
特に
「退職代行モームリ」
のようなサービスは、24時間365日対応という利便性と手頃な料金が評価され、多くの利用者を引きつけています。
さらに、近年の転職市場の活況や、転職支援サービスへの需要の高まりも、退職代行サービスの利用率を押し上げています。
退職代行における法的規制の現状
退職代行サービスを取り巻く法的規制には、現在明確な基準がない状態が続いています。
一部の業者が弁護士法違反容疑で摘発されている一方で、運営自体が違法ではないため、どの範囲まで適法であるかは曖昧です。
この点について、特に問題視されているのが弁護士法第72条における
「非弁行為」
の禁止です。
退職代行モームリを運営するアルバトロスのような事業者が、弁護士以外の者として法律業務に関与した場合、大きな法的リスクが伴います。
さらに、他の退職代行業者も同様の問題を抱えており、業界全体で法整備の見直しが求められる状況にあります。
「非弁行為」問題が業界全体に与える影響
「非弁行為」
の問題は、退職代行サービス業界に大きな影響を与えています。
特に、退職時に未払いの給与や残業代請求といった法的交渉に関与する場合、弁護士でない者が対応すると違法となるケースがあります。
退職代行モームリも、家宅捜索の対象となった背景には、こうした
「非弁行為」
の疑惑があるとされています。
このような問題が浮上するたびに、利用者の信頼を損ない、業界全体の信用にも悪影響を及ぼしています。
その結果、正当な業務を行う事業者にとっても不利な風潮が生まれるという悪循環が懸念されています。
悪用されやすい仕組みと利用者被害の可能性
退職代行サービスが悪用されるリスクも指摘されています。
利用者は
「退職の意思」
を会社に伝えるだけのつもりで依頼するケースが多いですが、運営側が法的に認められない範囲のサービスを提供したり、不当に高額な料金を要求したりする可能性があります。
また、法律の知識が乏しい事業者が退職交渉に介入することで、利用者が不利益を被る危険性もあります。
退職代行モームリが急成長した背景には利用者のニーズがありますが、その利便性に潜むリスクについては、より慎重に見極める必要があります。
今後のモームリの行方と司法判断の注目点
警視庁の捜査進展とアルバトロスの対応
退職代行モームリを運営する株式会社アルバトロスに対する警視庁の捜査が進展しています。
2025年10月22日には、アルバトロス本社や提携する法律事務所が家宅捜索を受けました。
この捜索では、同社が弁護士法第72条に違反し、報酬目的で顧客を弁護士へ斡旋していた疑いが浮上しています。
特に、退職以外の業務、例えば残業代請求など法律交渉に関わる非弁行為への関与が問題視されています。
アルバトロスは一方で、
「法的に問題のある行為は行っていない」
と主張しており、弁護士監修のもとでサービスを運営している点を強調しています。
しかし、運営体制の透明性に関する疑念が拭えない中、今後どのような対応を講じるのかが注目されています。
モームリのサービスが与えた社会的影響
モームリが提供する退職代行サービスは、社会に一定の影響を与えました。
利用者の
「退職したいが直接話せない」
という心理的負担を軽減し、特にパワーハラスメントや過重労働に悩む人々にとっての
「駆け込み寺」
のような役割を果たしました。
その結果、2022年のサービス開始から2025年までに累計4万人以上の利用者が退職を実現しました。
一方で、非弁行為に関する疑惑が浮上したことにより、退職代行業界全体が抱える課題も浮き彫りになりました。
モームリの急成長は、業界の需要増加を象徴するものでしたが、同時に法的規制の枠組みが追いついていない現状を浮かび上がらせました。
業界全体への規制強化の可能性
今回の弁護士法違反疑惑を機に、退職代行業界全体への規制強化が議論される可能性があります。
東京弁護士会は既に2024年11月に退職代行業者への注意喚起を行っており、業界の適正化を求める声が高まりつつあります。
特に、弁護士資格を持たない者が法律交渉を行う
「非弁行為」
に関しては、厳しい取り締まりの必要性が指摘されています。
今後、法的枠組みの明確化や、業界全体のルール整備に向けた動きが進むと考えられます。
関連するサービスを利用する際には、運営会社の信頼性やリーガルチェックの有無を慎重に見極めることが重要です。
利用者への信頼回復は可能か
モームリが培ってきた利用者の信頼を回復するためには、透明性の向上と法令遵守の徹底が不可欠です。
特に、非弁行為に関する疑惑を払拭するためには、適切な運営体制の見直しが求められます。
アルバトロスが捜査に全面的に協力し、調査結果を公表することは、利用者の信頼を取り戻すために重要なステップとなるでしょう。
また、新たに提供を開始した退職理由データに基づくアドバイスサービスなど、付加価値の高いサービスを通じてユーザーの満足度を向上させることも有効です。
業界全体が適正化に向かう中、モームリが再び社会的意義のある存在として認められるかどうかは、今後の運営次第と言えるでしょう。
まとめ
退職代行サービス
「モームリ」
を提供する株式会社アルバトロスは、累計4万人以上の退職を支援し、急成長を遂げた企業です。
その一方で、弁護士法違反の疑惑による家宅捜索が行われ、業界全体にとって重大な課題を浮き彫りにしました。
この事件は、退職代行サービスが抱える法的グレーゾーンや利用者保護の不十分さを再認識させるものであり、サービスの透明性や法的順守の重要性がさらに高まっています。
今後、警視庁の捜査や司法の判断によって、アルバトロスに対する疑惑がどのように明らかになるか、また業界全体にどのような影響を与えるかが注目されています。
同時に、退職代行モームリが新たなサービス展開を通じて信頼を取り戻せるかどうかも焦点の一つです。
このような問題を契機に、退職代行サービスの法的枠組みや業界基準の明確化が進むことが期待されます。